村上 嘉康
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地盤の重要性について〜1  -2010.09.21-
  前の 【耐震診断、補強について】 では建物本体の構造補強についてお話致しました。
 今回は更に大切な地盤について、その改修を行った事例も含めてお話致します。
  新潟県柏崎市に被災地住宅相談員として行ってきたお話はしましたが、柏崎市は市の半分が
 砂地で半分が泥炭地だそうです。当時、柏崎市内を車で移動中、アスファルト道路一面に
 撒かれたように液状化現象で吹き出てきた砂が溜まっていた事や、いたる所でそのアスファルト舗装
 道路が波打っていた様を思い出します。町全体が軟弱地盤上に成り立っている場所です。
  かたや私が普段生活している埼玉県狭山市は関東ローム層の上に成り立っている街で
 比較的地盤は安定している場所のようです。当然、もし同じ強さの地震が発生した場合は
 揺れそのものの強さが変わってきます。建物本体の強さが同じであれば、受ける被害の差は
 強い地盤の方が少なくなる訳です。
  最近では国を始め、各地方行政からもその地域の地盤強度に関する資料が出ています。
 この狭山市でも平成21年に「狭山市地震ハザードマップ」という資料が作られました。
  このような資料がありますと、そのエリアの概略の地盤強度、習性はわかってきます。しかしながら
 ピンポイントでとなると話は別です。平成21年10月1日から住宅瑕疵担保履行法という法律が
 施行され、新築住宅に関しては地盤調査を行い地盤から保証するという流れにようやくなりました。
  それまでは口頭では保証と言っても地盤調査を行っていない場合が多く、業者次第という時代が
 長く続きました。我々設計事務所が工事監理に入る場合や、構造保証を真面目に取組んで
 おられた建築業者さんが一般住宅の地盤調査を行うようになった時期がせいぜい二十年程前です。 
  したがって、これから事例でお話する昭和49年に建築してその後5年後に二階を増築し 
 その5年後に更に増築を施した一般住宅の場合、地盤調査をする感覚すらなかったと思います。
  
  この敷地は、狭山市内で普通に考えれば悪くはない地盤のエリアです。ところが、初期工事の
 完了後、北側から床が下がってきたそうです。クライアントはさほど気にならずにその後オカグラ増築を
 地元の大工さんに依頼され、その重量で更に沈下していったようです。その後に一階部分の増築を
 南側にされた時は何の変化も起こらなかったようです。
  後に判明した事で、このお宅の敷地北側約1/3が運悪く国道を拡張する時の工事で発生した
 旧アスファルトガラの捨場だったそうです。その上に土を敷いてあった敷地を買われそのまま家を
 建てられたので、不等沈下を起こしてしまった訳です。今の時代でしたら、大変な事になったでしょう。
  下の写真は、調査で床下に潜り記録した写真です。

     基礎が折れている状況           沈下した束石にパッキンを            床の傾斜で浴室排水が
                                   入れてある状況                 漏水している状況
  基礎が折れている状況ですが、上の隙間で私の手の平の厚みがちょうど入るサイズです。通常の
 調査で基礎のヒビあるいはクラックという表現をしますが、これでは折れていると言わざるをえません。 
 この折れたヶ所から左(北側)へ2m程いった所が、北側外壁の位置になります。つまり、このラインから
 アスファルトの捨場になっていたという事です。調査時に、この約2mの水平距離で床の沈下が
 約50mmでした。中央の写真は、地盤が下がり床束が浮いた為、後の増築時に床束と束石の隙間に 
 ベニヤでパッキンを入れてある様子です。右の写真は建物の変形で一番北側の浴室の洗い場
 排水勾配が逆になり水漏れを起こし、その下の構造材を濡らし腐食を進行させている状況です。
  さて、このようになると建物本体の構造補強前にまず建物そのものを水平に戻さなくては補強の
 計算対象にもなりませんし、補強工事もできません。
  このような事態に幾つかの対応できるメーカー技術担当者と検討した結果、最終的に住んだまま
 基礎ごと建物を水平に持上げ、合わせて地盤改良をする方法を選択しました。
  その内容は次回以降に御報告致します。


  
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