村上 嘉康
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地盤の重要性について〜3  -2010.09.27-
  ジャッキアップ終了後の工事が更に重要です。まずは建物下を掘り込んだ穴の埋戻しです。
 地盤改良剤で丁寧に埋め戻していく事になる訳ですが、根気との勝負です。
  丁寧に行っても、きっと空隙ができて部分の修正が1〜2年後には一度必要になろうかと
 思います。埋め戻しが完了してから折れてしまっている基礎の補強も必要になります。
  下の写真はその基礎補強の状況です。割れたヶ所にジャッキアップする時に並行して
 エポキシ系接着剤を入れ、安定してから鉄板でサンドするといった方法です。
          
       調査時折れていた部分の補強状態              外周基礎の補強と床束の入替状況
   
  今回の補強事例は極端な部類に入るかと思います。この建物ジャッキアップと地盤強化を行った後
 北側外部の給排水管、排水枡が建物の沈下と共に下がっていましたから、排水管も逆勾配に 
 なっていて排水が素直に流れていなかったり、漏れている部分も調査段階でわかっていました。
 したがって、その直しも継続して行いました。そして、ここまでの工期が約20日間かかりました。
 それらの事を全てクリアーして初めて建物本体の構造補強開始となります。
  一般論で言えば、ここまでの状態をみると建直しという選択肢もあると思います。しかし予算の事で
 いえば地盤補強、建物ジャッキアップ、耐震補強、浴室洗面改修、その他のリフォームも入れた
 総金額が建直しをした場合の1/6〜1/7程度で抑えられた事から考えると、どちらが良いのか 
 やはり最終的には、予算、年齢、家族構成等をクライアントに考慮して頂き、御判断して頂くしか
 ないかと思う次第です。御紹介したこの現場のクライアントも年齢的に建直す時期ではなく
 当然予算の事、今の生活リズムを崩す事も抵抗があり、そして何度か増築をして子供さん達が
 育っていかれたこの建物に愛着を持っておられた事が改修を選択された理由です。
 
  以上、不等沈下を起こした建物の改修事例をお話致しましたが、今の技術であれば建築物の中で
 軽量級に属する木造住宅を持上げる事は難しくなくできます。しかし、これから出来上がっていく
 世の中の多くの建物に、このような工事をしなければならない事が起こらない事を祈るのみです。


  
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