村上 嘉康
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設計、デザインについて〜引用するという事  -2010.10.29-
  建築のデザインには、様々なものがあります。洋の東西を問わず古典建築には、それぞれ
 先人達の素晴らしくデザインされたものがあり、芸術品としての評価を受ける建築が多々
 あります。そして近代〜現代建築も又しかりです。
  私達設計者には若い頃から憧れのデザインがあり、そして憧れの高名な建築家がいます。
 そして、その憧れが知らずに自分の意識の中に摺り込まれ、自身の設計の中に出てきます。
 その中で過去にある素晴らしいデザインを自分の中でどのように昇華させ具現化していくのかと
 いう事を目指します。それがデザインの引用という事と思っています。
  単純にあのデザインが格好いいからと、そのまま真似してしまったのでは、下世話な言葉で
 パクってしまったという事にならないかと思う次第です。世の中にある建物で、特に住宅の場合
 そのように見受けられる物を目にしますが、残念に思う事がしばしばあります。
  当事務所のメイン仕事である住宅は使われて初めて価値が出る物と、私は普段思っていますので
 重要文化財とか保存物のような芸術品扱いの物ではないと考えています。そのような重要文化財や
 保存物の中に、茶室という建物を御覧になる事があるかと思います。
  私自身、事務所独立前独立後も、各流派の幾つもの茶室造りをやらせて頂いた経験があります。
 その中で茶室造りにおいては、過去の名作と言われる御茶室の造り、寸法、材料などを
 なるべく再現する事を試みます。そうしますと先程申上げたパクりという事になるのではという懸念も
 あるのですが、茶室こそ使えなくては無用の物になってしまい、作法が出来る事が大前提の
 建築です。各道具も伝統にのっとっている為、安易にアレンジすると使えないものができて
 しまうという独特の建築です。私達は茶室のデザイン仕様を真似る事を、写しと表現しています。
  前回にお話した役に立つ部位(例えば構造材)が表現されている建築に私自身が惹かれている
 事から、そのようにデザインされた建築に限らず工業製品等々の色々な物の意匠を、これからも
 引用していくのではないかと思っています。
  当事務所で設計させて頂いた建物の中で、デザインの引用を意識したと記憶に残る事例を2例
 下記に紹介させて頂きます。
      吉村順三 軽井沢の別荘(吉村順三作品集より)       ルコルビジェ サヴォア邸(コルビジェ作品集より)
  
  クライアントが吉村順三さんの名作、軽井沢の別荘の片流れ屋根を大変気に入られ、設計を進めていく
 中で内外共漆喰で仕上げを考えている時に、恐れ多くも巨匠コルビジェのリボン窓を引用した事例です。
            桂離宮 中書院〜新御殿               聴秋閣(三溪園、園内のご案内より)
  
  
  当事務所の計画案です。敷地を初めて見た時に廻りの環境、ロケーションから桂離宮の雁行に
 配列された入隅の奥行感と、聴秋閣の方形でチョコンと乗った2階部分を何故かしら思い出し
 それらを引用した事例です。


  
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