村上 嘉康
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火災について〜2  -2010.12.16-
  建築基準法では、隣地境界線や道路中心線から、
 「1階においては3m以下の距離にある建築物の部分」
 「2階においては5m以下の距離にある建築物の部分」を延焼のおそれがある部分として
 防火措置を指導しています。この具体的な各寸法が決められた経緯は正直わかりません。
  今回の火災を目の当たりにすると、この寸法は火災発生初期ならば通用するけれども
 消防車が到着し消火活動が始まるまでの時間を考えると、かなり甘い寸法と思いました。
  建築基準法で謳っている考え方が間違いないと思えた事は、やはり高い位置から熱が廻って
 いく事でした。
  目の当たりに現実を見てしまった立場で申し上げると、風で煽られる事がない炎で
 実際は建築基準法でいう寸法の2倍は必要かと思います。
  ましてや風で煽られた場合で考えれば、その寸法は検討もつきません。
  前にも申し上げたように、土地事情から一般的にはさほど広い敷地を求める事は難しいという
 事がありますから、法律で謳う延焼のおそれのある範囲に建物を建てざるをえない現実が
 あります。そうなれば目標とするものは、絞られてくると思います。
  つまりは、火災を起こさない、起き難い仕様、システムに建物を考えていくという事が重要と
 改めて考えさせられました。
 
  阪神大震災では、火災の延焼防止に樹木が大いに役立ったという報告を聞いています。
 今回の火災を見ていても、火元のお宅の南の庭には、常緑樹が何本か植わっていました。 
 その樹木の陰になっていた被害を受けたお宅の部分はやはり塗装の溶け方は少なかった事は
 事実でした。この事も改めて参考事例となりました。
  
  建築そのものとは関係のない事で私が現在立場上、市のある委員会に属していまして
 その委員会は市内の各部署長が出席する委員会である事から、今回の火災において
 消防、救急、警察の皆さんは本当にそれぞれの任務を危険を顧みずやって頂いた事には
 感謝させて頂いたのですが、災害の中では規模が小さな今回のような民家火災でさえ
 消防、救急、警察のそれぞれの部署の連携が機能していない事実を体験し、更に大きな災害時に
 どのようになってしまうのか整備を含め、その委員会で指摘させて頂きました。
  
  そんな状況の中でも、良い事も発見できました。このような緊急事態の時は、普段顔程度しか
 わからない近隣の人達と何故かしら協力しあった事で、不思議な仲間意識が芽生えたという事    
 です。今年起こったチリの落盤事故で救出された人達の救出間際が、その最たるもののような
 気がしました。
  これからまさしく本格的な冬になる事で、又あちらこちらで消防車のサイレンが多くなる季節でも
 あります。二度と経験したくないものの、稀な経験をし建築的にも考えさせられ、社会的な連携や
 人の繋がりを勉強できた貴重な体験でした。


  
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