村上 嘉康
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無垢木材補修報告〜1  -2011.01.07-
  新年あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願い致します。
  今年最初の手記は無垢木材の完成後に発生した乾燥収縮における隙間、割等の補修について
 書かせて頂こうと思います。
  大泉学園 SKY PATIO(平成15年3月完成)の構造部乾燥収縮の割れ隙間の補修を昨年11月に
 行いました。今回、次回とその補修報告をさせて頂きます。
  この建物はクライアントの奥様の母上一族の御出身地である新潟中越地区の木材(全て杉)を
 使用して造った建物でした。完成後約7年半経過してからのメンテナンスです。
  当時、新潟山中の製材所にある木材乾燥機であらかじめ使用木材の人工乾燥を行い含水率計で
 測定した記録では、各部材で多少のバラつきはあるものの16%〜18%を示していました。材料検査に
 新潟を訪れた時期は完成前年の平成14年のちょうど梅雨が明けたばかりの夏でした。
 「設計、デザインについて〜自然素材について」 の時にもお話しましたように無垢の木材を使用した 
 時の難しさと、おもしろさがまさしくここにあるのですが、一般的には木材には水分が含まれていて
 含水率というもので呼ばれています。そしてその含水率が20%に乾燥していく過程でほぼ木材の
 収縮乾燥の変形は納まると言われています。
  その乾燥方法には、天然乾燥と人工乾燥の二種類があります。天然乾燥は樹木を伐採した後
 葉がついたまま枝葉から幹の水分を蒸発させる為にしばらくの間、そのままにしてねかせておきます。
 これを葉枯しといいますが、この方法をとってから木材を大きめに製材してあとは倉庫で木材の間に
 カイモノを入れて風通し良く保管し、数年間おいて乾燥させていく方法で、昔の普請と言われる  
 建築はこの方法で木材の暴れが納まってから大工さんが加工を始めたという歴史があります。 
  で、現在はどうかといいますと、このように木材を熟成保管していく為の倉庫、人件費等々
 建築コストに跳ね返る事を避ける事、生産性のスピードを上げる事からほぼ100%に近い状態で
 乾燥機に木材を入れ規定の含水率まで下がったところで出荷というように変わってきました。
 但し残念な事に人工乾燥を行うと水分の他に木材が持っている油分等が合せてとんでしまい材料
 としての粘り強さは若干減ってしまいます。予算が許されるならば天然乾燥材を使いたいものです。
  この人工乾燥が一般的でなかった25年程前までは、一般住宅はグリーン材と言ってほぼ生木を
 加工して組み立てていた時代が戦後長く続きましたので、耐震調査の対象となる昭和56年以前の
 建物を含め昭和が終わる頃までの木造一般住宅において構造材変形が原因で建具の
 建付けの狂い、特に2階床の不陸が出る等の多い理由はそこにあります。
 
  昔から木の家を建てるならば、その土地で育った木材でなおかつ、山の北斜面でゆっくり育った木を 
 使うのが良いとされています。日本は国土はさほど広い国ではないのですが、その土地々で様々に
 気候が違います。本来であれば 大泉学園 SKY PATIO は練馬区に建築された建物ですから、多摩 
 あるいは飯能周辺の西川材が関東の夏の高温多湿、冬の低温乾燥に一番適合した木材かと思います。
 新潟の中越地区は夏は関東と、さほど変わりませんが、冬は御存知のように豪雪地帯ですから
 低温多湿の地域です。ここで育った材木が関東でどのようになるだろうかと当時、期待と不安で
 建築を監理していった記憶があります。
  木材の地域における気候格差で悩んだ事は、他にも茶室建築で京都の北山杉磨丸太を使用した際
 関東で建築した場合、やはり磨丸太表面に冬の乾燥による小さな干割れが発生して困った事を
 思い出します。
  

  
  化粧梁接合部の木材の乾燥収縮原因の隙間。梁継手(台持継手)の収縮寸法差における目違い。
 太柱の乾燥収縮における台面の割れの各症状です。
  完成してから1年〜2年程で写真のような状況が出てきてそれからはほとんど変形はなく7年半の 
 年月が過ぎ、そして今回のメンテナンスを施す経緯となった訳です。


  
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